苦恋症候群
呆然とあたしを見上げる遥の部屋着のすそに、手を差し込む。

びくりと震えたその肌を、するりと撫でた。



「ゆ……ッ」



遥の身体、熱い。

もしかして、少しはあたしのこと意識してくれたのかもって。

うれしくなりながら、本格的に上の部屋着を捲り上げようとしたとき。



「や、めろ……っ!」



思いがけない荒い声で、遥の手が、彼に触れるあたしの手を掴んだ。

とっさに肩をはねさせて、彼を見下ろす。悲しげな、苦しげな表情をした遥と、目が合った。



「……ごめん。ごめん、ずっと、苦しめて」

「はるか……」

「でも、俺──」



ぎゅっと、あたしの手首を握る彼の手に力がこもる。


……ああ、ダメ。

それ以上、言わないで。



「……雪妃姉さんと、そんなこと、できない」



ガツン、と鈍器で頭を殴られたような、そんな衝撃だった。

初めて呼ばれた、『姉さん』っていう呼び名。

それがこんなに……残酷なくらい切なく響くなんて。
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