苦恋症候群
彼のからだをまたぐような形になっていたその状態から、ベッドの下に降りる。

遥から顔を背けるように、視線を下に向けた。


……そっか、そうなんだね。

あたしは、たとえ一時的にでも──きみの“姉”以上の存在には、やっぱりなれなくて。



「……わかった」



きみは、あたしを。

汚しては、くれないんだね。



「わかった。ごめんね、変なこと、言って」

「、ゆき……」

「ごめんね、もう、あんなこと言わない。もう、迷惑かけないから……起こしちゃって、ごめんね。……おやすみ」



あたしはうまく、笑えていただろうか。

今にも泣き出してしまいそうになるのを堪えながらおやすみを言って、また布団の中に身体を滑り込ませる。

少しして、遥もまたベッドに横になったのがわかった。



「……ッう、」



頭までかぶったふとんの中で、必死に嗚咽を噛み殺す。

堪えきれずに流れた涙が、まくらを冷たく濡らした。


……ああ、すきだなあ。

遥のその、まっすぐで揺るぎないところ。

血は繋がってなくても、“姉”であるあたしをとても大事にしてくれるところ。

本当に、だいすき、だったんだよ。
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