苦恋症候群
日が昇る前に荷物をまとめて、あたしは静かに遥の部屋を出た。

今はもう、雪はやんでいたけど。それでも降り積もった雪が地面を隠して、あたり一面、純白の世界だ。



「はあ……」



まだ明るくなりきらない空に、あたしが吐いた白い息が上っていく。

胸もとに手を入れて、首につけたネックレスを取り出した。


遥が15歳のとき、あたしの大学入学祝いにとプレゼントしてくれたネックレス。

その雪の結晶のモチーフ部分を、親指の腹で撫でる。


……もう、駄々をこねる子どもみたいに往生際悪くこのネックレスばかりつけるのも、やめなきゃなあ。

せっかく遥が、“姉”のあたしを大事にしてくれたんだから。

“姉”と“弟”の関係を、望んでくれたんだから。

だから、あたしも。これからは、きっと──……。
< 323 / 355 >

この作品をシェア

pagetop