苦恋症候群
「……遥くん?」
ふと目が覚めると、隣で眠っていたはずの遥くんの姿がなかった。
彼がいたシーツに触れてみると、まだあたたかい。下着だけしか身につけていない剥き出しの肌をくるむように毛布をかぶって、私はベッドを下りた。
暗がりの中、足もとに気をつけながら彼の寝室を出てリビングに行くと……いた。
寒いのが苦手なはずなのにロンTにスウェットという薄着で、彼は寒空の下のベランダで、ぼんやりとタバコをふかしていた。
カラカラとベランダに出るガラス戸を開けると、気づいた遥くんが振り返る。
「ごめん、起こしました?」
「ううん、目が覚めちゃっただけ」
まだ付き合いたてだからか、プライベートでも彼はいまだに少し敬語が混ざってしまう。
そっか、と再び前を向いた遥くんの隣に、静かに私も寄り添う。