苦恋症候群
「ふ、ははっ。森下おま、いちごみるくかよ!」

「え、ちょ、そんな笑うとこですか……」

「いや、はははっ。うんまあ、そこだけじゃないんだけど」



くくっ、あーうん、ありがとな。

いまだに笑いを堪えながらも、課長はそう言って私の手のひらからアメを受け取った。

対する私はなんだか照れくさいような、拗ねてしまいたくなるような。なんとも言えない気持ちで、真柴課長の足元を見つめる。


なんでしょう。アラサー女子は、いちごみるく味のアメを持ってちゃダメだったのでしょうか。

だけど課長甘いものも好きなはずだから、そんな迷惑がられてはないと思うんだけど……。



「おーい、森下?」



だんだんと不安にとらわれて、無口になっていた私。

課長は何か感じとったのか、口元に笑みを浮かべたままひょいっと私の顔を覗き込んでくる。



「……ッ、」



その距離の近さに過剰すぎるくらい反応して、思わず後ずさりしてしまった。

困ったことに、なんだか頬も熱い気がする。

課長は一瞬きょとんとした後、小さく苦笑した。
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