苦恋症候群


ふらふらと若干おぼつかない足取りで、ネオンが輝く繁華街を歩く。

お気に入りの春用ジャケットのポケットからスマホを取り出し、時間を確認してみた。

デジタルで表示されたそれは、【22:31】。

10時半……どうしよ、まだ飲み足りないな。もう1軒、行こうかな。


アルコールのせいか少しだけぼんやりする頭で考えて、またスマホをポケットにつっこむ。

行き先を思案しながらぽてぽてパンプスを動かしていると、ちょうど前から来た人物とすれ違い様、相手の腕に私のバッグがぶつかってしまった。



「わっ、すみませ……」

「あ、」

「ふぇ?」



頭上から降ってきた声に、顔を上げる。

そこで私を見下ろしていたのは、とても予想外の人物だった。
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