苦恋症候群
「……ん……っ」



顔を横に背けて逃れようとしても、ベッドに深く抑えつけるようにされてるから、びくともしない。

とっさに動かした手も、まったく外れないし。

きつく結んだ私のくちびるを、三木くんの舌が器用になぞる。けれど私は頑として、そこを開けようとはしなかった。


けれどもそのうち、だんだんと息苦しくなってきて。

酸素を取り込むために思わず開けたくちびるから、すかさず三木くんの舌が侵入してくる。



「ふあ……っ」



あ、やばい。

このひと、キス上手い。


彼のあたたかくてやわらかい舌が、私の口内を我が物顔でなぶる。

歯列をなぞって、上顎を刺激して、逃げまわる私の舌を絡めとって。

そのめちゃくちゃ気持ちいい感覚に、頭のてっぺんから足のつま先まで、とろけそうになる。

無意識に、自分の声じゃないみたいな鼻にかかった声が漏れた。
< 93 / 355 >

この作品をシェア

pagetop