苦恋症候群
「……み、きく……っ」

「森下さん、今すごいエロい顔してる」



キスの合間につぶやいて、三木くんが目を細める。


そう言うきみの顔の方がよっぽどエロいと思いますが!! なんだそのあふれ出る色気は!!

心の中で思っても、口に出すことなんてできずに。ただ私は、そのくちびるに翻弄されるだけ。


そうして私がキスに気を取られて抵抗しなくなった頃、ようやく彼がくちびるを離した。

いまだ至近距離で私を見下ろし、無防備なふとももを撫でながら彼が笑う。



「……その気になってきた?」



そのささやきで、もともと熱くなっていた頬にさらに熱が集まった。

無意識に浮かんでいた涙でにじむ視界のまま、それでも私は、目の前の人物を睨みつける。



「ッならない……!」

「ふぅん。そう」



三木くんがあっさりとつぶやき、また私の身体に這わせた手の動きを再開させた。

内もも、膝裏、腰。彼のちょっとごつごつしてる綺麗な手が皮膚をなぞるたび、びくびく身体が反応する。

時折わざと下着に指を引っかけるような動きをされて、心臓がはねた。


くそう、完全におちょくられてる……!

この猫かぶり、変態、無慈悲男──!!



「強情ですね。身を任せれば楽なのに」

「っあ、ん、だ、だれがきみと……っ」

「森下さん、普段ちゃきちゃきしてるけど、喘ぎ声かわいいですね」



私の首筋を舌でなぞりながら、ふっと三木くんが笑った。

そのかかる吐息にさえ、私はぞくりと反応してしまう。
< 94 / 355 >

この作品をシェア

pagetop