それでも私は恋をする
「かんぱ~い!」



課長の発声と同時に、私は目の前にあったビールを一気に飲み干した。



「ちょ…ちょっと!素子ちゃん、大丈夫?」



三沢さんが飲めない私の一気飲みに、慌てて声をかけた。



「三沢さん、知ってたんですか?」



ざわついた席の中で、私の小さい声は、三沢さんにしか聞こえなかった。


「…この前の会議で、初めて聞いたよ…。あの人どういうつもりで素子ちゃんを…」



三沢さんが刺身を食べながら、怒った口調で呟いた。



「だから、やめとけって言ったのに…」



上北さんが、ギロリとした目を私に向けた。



「黒石さん、本気やったん?」



私は、プルプルと頭を振った。



どちらかと言えば本気…やったけれど。十和田さんに彼女がいてるの知ってたら…恋なんかしなかった。



そもそも、タイプちゃうし!十和田さんは、背が低いし、お世辞にも『カッコイイ』とは言えない。弘前さんみたいなかわいい女子を、どうやって落としたんやろか?



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