桜唄
「……律」
となりを見た。
一瞬、タオルを差し出すずぶ濡れの少年が見えた。
びっくりして、瞬きをする。
「…あ…」
…ばかじゃん。
誰もいるわけないし。
ていうか、今日晴れてるし。
もう、戻れないのに。
何を期待した?
何を期待して、今日まで生きてきた?
あの時、思ったんだ。
これもしかして運命なんじゃないかって。
あのずぶ濡れのシルエットを見たときから感じてた。
この人、ちがう。
好きになりそうって。