桜唄


あのとき。

いつか律を忘れて、翠を好きになると思ってた。

…そんなことを期待しながら、翠と付き合ってきた。


好きになったけど。

律より好きになれなかった。



「………翠…私」


「え?」


「私………っ…!」



やばい。

目から…涙がとまらない……。



「……具合、やっぱ悪いんだろ?保健室いくぞ」



ぐっ。


翠が私の手をひいた。



…気づいてる。

ほんとは具合悪くないことに。


あえて聞かない。

これが翠の優しさ。


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