桜唄

一回こんなことを考えてしまうと、私の気分はなかなか晴れない。


そのあとも翠が何かおもしろいことを話していたけど。

相槌さえうっていたもののほとんど上の空だった。

そのまま時間が過ぎ、気づけば私たちは帰りの電車に乗っていた。


太陽が沈んで暗くなりはじめた空を窓から見る。


この一年、ふと気づくと律と翠に対する気持ちの重さをくらべてしまっていた。


翠のことが好きだ。

いいところもたくさん知ってる。

今日も目の前で転んだ子を一目散に助けに行って、そういう優しいところに胸がきゅんとするのは確かだ。


だけど。


たとえば、明日。

翠が転校するとでも言ったら、私は悲しみながらもどこかほっとするのだろう。

そして、もし転校するのが律だったら、私は狂ったように泣きわめくのだろう。


…翠と別れるべきなのだろうか。

私は、この人と付き合っていていいのだろうか。


''忘れるために付き合った''


翠のこと好きでも、こんなのって…。

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