桜唄



翠が私の手をつかんで引っ張った。

そんなに力は入ってなかったのに、やけに強く感じて。




カシャン…




ブランコから離れた拍子に、鉄の鎖の音が響いた。


翠の前につんのめるようにして立つ。


視線をあげた。

翠は、笑ってない。

寂しそうな目をしていた。




「希衣」


ちいさく、ちいさくつぶやく。




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