桜唄


何が起こったか分からなかった。



世界で、私たち二人だけしかいないみたいな。


音が全部消えた。



人生でまだキスというものをしたことがなかった私は、ただ目を見開く。


きっとほんの二秒くらいだったのだろう。

だけどそれが本当にながく感じた。


翠がゆっくり唇をはなした。


私は動揺して、どうしたらいいか分からなくて、ただまばたきをした。

そして、恥ずかしくなって、また目を伏せてしまった。



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