桜唄
すると。
ふわりと、翠の両手が私の頬に触れた。
「俺のこと…見てってば、希衣」
くいっと私の顔をあげて、またすぐにキスをする。
まるで壊れ物を扱うように、私に唇を重ねた。
…初めての感覚だった。
このあたたかかさも。
そして、
この耐え難い切なさも。
やっと翠が私から体をはなす。
そして今度は私を引き寄せてぎゅっときつく抱きしめた。
翠の、においがした。
「翠…?」
おそるおそる、名前を呼んだ。