桜唄
「これほんと翠くんに言いたい」
「うわーやめてやめて!」
私が焦っているのを見て、完全に面白がっている楓花。
「『恋人が気になるのはわかりますが』…ねぇ似てない今の!?きゃはははっ」
先生に言われた一言を何回もまねするこの子を、ほんとな殴ってやりたいと思った。
「きーいー教科書かしてー!」
…運悪く廊下からさけぶ声。
翠は面倒くさがりだからいつも叫んで私を捜すけど、今日に限ってすごく大きく聞こえる。
その声が教室全体にひびく。
「…ぷっ、出ました!山下翠!」
クラスの半分ぐらいが廊下の方と私を見合わせて笑っている。
「え、なになに?」
翠はもちろん何も分かってない。
私はますます赤面する。