桜唄


「きいーすうがくー」


視線が痛い、痛い。


もう恥ずかしくて体中が熱かった。

急いで机の中から教科書を出して翠のところに走る。


「はい数学!」


翠におしつけるように、勢いよく数学の教科書を渡してしまった。


「なに、どしたの?」


私とクラスの反応のことを聞いてくる翠。


「なんでもないよばか!」

「え、怒ってんの?」

「怒ってない!」


ああ、なんでこうなるんだ。


教科書渡すついでに少し話すのが、今まで楽しく感じていた。


なのに今日は散々だ。

何も分かってない翠からしたら、私はただつんつんしているいやなやつで。


じゃあねの一言も言わずに私は自分の席にそそくさと戻った。



翠ごめん…。


ふっと廊下の方をみた。

翠はちょうど、2組の前からいなくなるところだった。






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