桜唄


だけど結局は。

律にふられたに等しいことをされて傷ついた心を、この寂しさを、翠の優しさでいやしていただけなのかもしれない。

そう思うと胸の奥が苦しくなる。

だから私はこんなこと考えないようにしていた。
 
そのまま二ヶ月がたっていた。







「あ」


部活後の、二人一緒の帰り道。

市役所の掲示板のところで翠が立ち止まった。

「ん?」

私も掲示板をみる。


『麻倉夏祭り 7/23・24』


今年の夏祭りの宣伝だった。

この地域で行われるわりと大規模なお祭りで、1日目の夜には花火があがる。



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