桜唄
「まあ…あれだよな、夏期講習とかあるし…無理かなぁ」
翠が残念そうに言った。
「そうだよねぇ…花火、見たかったなぁ」
私が空を見上げながら言った。
「希衣花火好きだったっけ」
「うん好き。あー花火みたい、あー花火になりたい」
花火になれば勉強しなくてすむのに。
余計なことも…考えなくて済むのに。
「バカかよお前」
翠が声をあげて笑った。
歩きながら、話題は自然と進路の話になった。
「希衣は…やっぱ麻西受けるの?」
―――麻倉西高校。
ここら辺では有名な、県内トップの公立校である。
「受かるワケないけどね、だめもとで受けるかも」
力なく笑う私。
こんな夏祭りに行きたかったとか考えているようでは到底受かりそうにもない。
「そっかぁ…」
「翠は?」
翠はなんだか浮かない顔。