桜唄
「おいおい、大丈夫か?」
…目の前で声がした。
あの、少しけだるそうな声。
女の子に駆け寄り、しゃがんで目線を逢わせる。
「うわっ血めっちゃ出てんじゃん!」
「へっ…へ…いきだも…」
顔をゆがませて痛みに耐える女の子。
ほっぺを真っ赤にしている。
「傷口洗わなきゃまずいよな」
そう言って軽々女の子を持ち上げ、お姫様だっこをした。
私はその光景をしばらく、ただ、突っ立って見ていた。
すぐ近くの水道まで歩いていき、女の子を降ろして傷口を洗おうとしたとき。
ついに私はその場から動いて、水道の方へ走った。