桜唄
「俺は…私立かな、陸上強いところ行きたいから」
「そっかぁ…」
翠は高校でも陸上を続けるらしい。
律と同じ…長距離選手の翠。
律は中距離が得意で全国レベルまでいっている。
本当に才能があるんじゃないか。
それに対して、長ければ長いほど速い翠は、努力の量は誰にも負けないと思う。
前家での自主練量を聞かせてもらったけど、こんなヘラヘラした適当な感じからは想像もつかないほど自分に厳しものだった。
本当は、ものすごい努力家なんだ。
「高校は一緒のところにはいけないのかな」
…なにげなくつぶやいた一言。
―――本当は自分の本心にも気づいてる。
このままちがう高校に行っても別にいいと思っていることに。
こう言えば、翠は喜んでくれるかもしれない。
そんな計算された一言だってことに。
律と違う高校にさえいければ。
あの人の事を忘れられさえすれば。
あとはもうどうでもいい。
麻西を受けるのも、まさか陸上に没頭している律がそこまで勉強して頭よくなるなんて無理だろうという、勝手かつ失礼な妄想のもとに下した結論だ。