桜唄


奥原 律



ノートのページに書いてみる。


それを修正液で消した。


白い液体が光に反射する。





もうやめてしまおう。


後悔すること。

後ろを向くこと。


…律を好きでいた過去を、消してしまおう。




―――そんなこと、できるかな?





視界がかすむ。





この世は無常だ。


古典の何かに書いてあった。


何事も移り変わる。

人の心も。


たまたま律だった。

一目惚れしたのが。
 
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