桜唄
「いたっ…しみるよ…」
「もうちょっとの我慢……はいおわり!これで綺麗になった」
水道の蛇口をしめる彼に、私は後ろからそっとハンカチを差し出した。
「…使う?」
女の子が顔を上げて私の方を見た。
彼ははっとしたようにこっちへ振り向く。
「希衣!」
「さっきからずっと見てた」
へへ、と笑って舌を出す。
「まじか~俺が別の子お姫様だっこしてて妬いちゃった?」
「妬かないし!ばか」
翠は、いたずらっぽく笑った。