桜唄


「いたっ…しみるよ…」

「もうちょっとの我慢……はいおわり!これで綺麗になった」


水道の蛇口をしめる彼に、私は後ろからそっとハンカチを差し出した。


「…使う?」


女の子が顔を上げて私の方を見た。

彼ははっとしたようにこっちへ振り向く。


「希衣!」

「さっきからずっと見てた」


へへ、と笑って舌を出す。


「まじか~俺が別の子お姫様だっこしてて妬いちゃった?」

「妬かないし!ばか」
 

翠は、いたずらっぽく笑った。

 

 
< 5 / 130 >

この作品をシェア

pagetop