桜唄
「ほら、いくぞ!」
「……え!?」
翠にいきなり腕をつかまれ、そのままぐんと引っ張られた。
走り続ける翠に引きずられ、後を走る私。
肩にかけている紺のトートバッグが揺れて私が走るのを邪魔する。
「はぁっ…はぁっ…」
相変わらず脚が速い。
容赦ない、本当に。
翠がどこに向かっているか分からなかった。
どこへ行くのか聞いても答えない。
住宅街を通り過ぎ、いつも寄る公園を右に曲がる。
……お祭りの音が近づいてきた。