桜唄


「千尋見なかった?」


律はドアに手をかけたまま。


「さっき楓花と帰ったよ」

「あ…そか。付き合ってんだよな、あいつら」


忘れてた。

って律がちょっと笑った。


………きゅっ。

胸の奥が痛む。



「希衣は帰らないの?」


…心が、くるしくて、


「うん…もうちょっと残る」


だけどなぜか


「そっか。頑張れ」


……じんわりと、あつくなる。




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