パパは幼なじみ
「あのね~、廊下に出たらとおるん発見したから連れてきちゃった~!」
「よくやった、ありさ!」

満足げな顔をしたありさと、好奇の目を向ける早紀にため息が出る。
私も“そっち側”だったら確かに興味津々で食らいつくかもしれない。“こっち側”の辛さを痛感した。

「まずは証言者ありさ。知っていることを全てどうぞ!」
「は~い!これは昨日の夜のことです!ママに頼まれて、あっきの家に肉じゃが届けに行ったんだけど~、おばさんいなくて、あっきが出たの~。あ、あっきね、こっちに戻ってきて、偶然私の家の近くのマンションに住んでて~」


…長い。本題になかなか入らない。いつくるかと力をいれていた肩も疲れてきた。さすがの早紀もあきてきたらしい。

「そんで?真奈たちと関係ある話はまだ?」
「え~と…あっ、それでお礼にって教えてもらったの~。とおるんと真奈ちゃんが前からお付き合いしてるんだって~!以上です議長!!」
「え~っ!!マジで~っ!?あっ、おほん。長々とありがとう、証言者。では真奈被告?言いたいことは?」

やっと回ってきた。とりあえず、本当は付き合っているわけじゃないって弁解してから…

「そうなんだ。ありさにも黙ってたけど、真奈ちゃんと僕は付き合ってるんだ。明正には昨日話したばっかりで…。」
「ちょっと徹くんっ!?あの、だから…」


キーンコーンカーンコーン ×2


無情にも流れる予鈴のチャイム。
弁解する間もなく、にやにやしている2人に背中を押され、屋上を後にした。
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