パパは幼なじみ
教室のドアの前では徹くんが立っていた。

「面談、長かったね。こんなんじゃ、クラス全員なんて何日かかるんだろうね。」
「待ってたの?」
「うん。片倉さんたちに追いかけられて大変だったんだ。教室に入るのが怖くて。」

フフっと徹くんは笑う。ふとした瞬間、拓人に似ていると思う。
そういえば、徹くんと一緒に帰るところを高田先生に見られてしまったらどうなるのだろう。自分は最低だ、と感じながらも、やっぱり嘘を守りたいと思ってしまう。

「放課後…」
「ん?」
「放課後、学校でやることができたんだ。高田先生に頼まれて…」
「ら王ちゃんに?わかった、今日は先に帰るよ。」
「ごめんね。」

一緒に帰らないことよりも嘘を重ねていくことに罪悪感を感じる。“平気だよ”と笑う徹くんの優しさが痛い。

「あのさ、真奈ちゃん。謝る言葉をお礼の言葉に変えると、人生が360度変わるらしいよ?」
「え?」


キーンコーンカーンコーン ×4


「あ、本鈴だ。教室に入ろうか。」
「徹くん。360度って元に戻ってるよ?」
「……あ、間違えた」

苦笑いを浮かべる彼に、気持ちが少しほっこりした。

「でも…ありがとう。」

顔が熱くなるのを感じた。
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