パパは幼なじみ
「ごめんね」

帰り道、急に徹くんが謝った。

「どうしたの?突然…」
「朝と放課後、教室に入る時と出る時はバラバラでって決めたのに、今破っちゃった」
「いいよ。一緒に登下校してる時点でみんなにバレてるよ。高田にも知られたし、もう隠さなくていいや。」


ニセカップルを演じることになったときに決めたことがある。藤島明正にだけバレなければいいから、冷やかしを防ぐためにも、なるべく他の人には知られないようにしよう……

「でも、地味な僕なんかと付き合ってるなんて噂されたら、真奈ちゃんにさらに迷惑が…」
「そんなこと…別に…迷惑だなんて…」

あれ?出会った時の私なら、はっきり“迷惑”って言ってるのに……言えない。


徹くんが、急に私の腕を引っ張った。

「おばさんの店に行こう。聞きたいことがあるんだ。」

そうして、私たちは家とは逆の方向に歩いていった。
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