まだあなたが好きみたい
菜々子たちの学校は第一クォーターからもの凄いスピードで差をつけられていた。
大きく水のあいたその数字を受けての相手チームの対応は早かった。
そもそも一軍ではないという選手たちが、ベンチが温まるよりも早くそれ以下のメンバーへと入れ替えられる。
見ていて胸の悪くなる、なんとも不憫な戦いだった。
逆転など、素人の目にも無理だとわかる。
次第に応援の声も途切れがちになり、菜々子たち身内の客席は、できるだけ無様な点差にならないようにとだけ祈るようになった。
口元に手を押し当てて、さも身内の苦境に心を痛めているように菜々子は試合を追っていた。
有正は、―――寝ている。
盛大に開いた脚がいよいよ菜々子の領域にまで侵入している。
しかし怒ることは出来なかった。
なぜなら彼はここに来ることを必ずしも自らが望んでしたわけではなかったから。
菜々子に付き添いを頼まれて、ほとんど嫌々連れてきたようなものなので、冷やかすまでもない試合だとわかると早々に意識を手放してしまった。
第3クォーター終了を告げるブザーが虚しく会場の空気を振動させた。
勝負が見えた試合、嘆声も興奮の唸り声もすっかり朽ちてしまった会場にそれはとてもよく響く。