まだあなたが好きみたい



そのたびに匡は地団太を踏み、頭をかきむしっては、気持ちが鎮まるのを待った。




けたたましいホイッスルの音で匡はハッと我に帰った。




その直前、かすかな振動が足の裏にあった。




なんだと思って目を向けると、同学年の夏原(なつはら)が俺の足元でしりもちをついていた。






ファール! との鋭い声に、そうか、俺がぶつかったのかと、その経緯はおぼろげながら、審判の声の意味するところと経験で、取り急ぎ状況を把握した。




痛みに耐える苦い顔。


匡の頭がすっと冷えた。




慌てて一歩身を引いて、おずおずと手を差し伸べる。



苦い笑みを浮かべて、夏原は、さんきゅ、と俺の手を握った。皮の硬い手のひらだった。




「大丈夫か?」


「う、うん」





170ちょっとというくらいの小柄な男。


クラスは違う。これが例の高校からバスケをはじめた初心者だ。

ただ、元陸上部というだけあって俊足で、ひょろりとしているわりに足腰が出来上がっている。

練習試合では何度か二軍で選手に選ばれているのを見たことがあった。



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