まだあなたが好きみたい



「それよりだよ。俺よりむしろ窪川の方こそどうなの?」


「どう? なにが、どう?」


「プレーが荒くない? って。それに、なんていうか、いつもの窪川ならあんなにわかりやすく相手に突進していかないだろ? それが狙いって場面ならともかく。

周りがよく見えてて、なんでも的確で、すばやいのに方向転換とかすごい切れがあって絶対つまづいたりつんのめったりしないし、すごいって皆言ってる。

窪川の場合、相手がファールを狙ってきてもとっさに避けられるじゃん」



「い、いや、そこまでの自信はねぇけど」





うわ、俺謙遜したよ今。謙遜。俺の辞書にもあったんだな。


自分に気後れする。変な汗が噴出した。






「いいや! まあもっとも、俺はまだ試合見てても細かいとことかついていけないとこも多いけど、経験者のやつらは言うもん、見えるやつは見えてるって。
そいで、わかるけどできないって。こないだ一軍に昇格した白井とか畠とかね」


「買いかぶってね、ずいぶん」





軽い口調であくまでも受け流すみたいに返したものの、次の瞬間には匡は思わず息をつめていた。




さすがに鼻白んだ。白井、畠。あいつらが。




白井も畠も中学から知っている男たちだ。


白井にいたっては二年のときからレギュラーだった。


畠は三年に上がる年の春からいきなり頭角を現した男だ。ただ、卒業間際に怪我をして医者のストップをかけられると、高校に上がってからはリハビリを兼ねた基礎トレーニングに従事し、長いこと二軍で流していた。


しかし三学期からは一軍に合流するかもしれないと噂されている。


いずれも中学から実力を認められ、展望を期待される選手だ。





そいつらが俺を認めている、だと?





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