まだあなたが好きみたい
素直な反応が好ましかった。
遠い遠い記憶だが、俺にもこんなふうに人の言葉に純粋に心躍らせた無垢な時期があったことを思い出させ、くすぐったくなる、そんな反応だった。
「見込みがあるって思われてるんじゃないか?」
「そうかな?」
「おそらくな」
引退までと言わず、もしかすると来学期、県主催で行われる大会から、主力選手とまではいかないにせよ、夏原は起用の好機を得るかもしれない。
おそらく俺は出されない。メインは二軍になるだろう。
うちの学校は県では頭ひとつ抜けている。
結果が見えていて参加するのは礼儀的な面が大きいが、練習試合やローカルな大会は日ごろなかなかスポットライトを当てられない部員の試合度胸を測るいいチャンスでもある。
だからもし夏原がそこに食い込めたなら。
次は俺もちゃんと見ておこうと思った。
部室に入ると、夏原の帰りを待っていたやつらが笑顔で手を振り――振りかけて、一様に怪訝そうな顔つきになった。その目は揃って俺を注視している。
何で一緒にいるんだ?
予想していたことだからいまさら別に傷つくようなことでもない。
ただ、夏原があっさり彼らの方に行ってしまったのには一抹の寂しさがあったけれど。
しかしこれが俺の日常の光景だ。