まだあなたが好きみたい
学校全体で見れば、学校の名前と威信を背負った期待の星でも、部内での存在は、特に同級からは、いれば頼りになるけどねくらいで、基本は孤軍奮闘だ。
もともと口数が少ない白井はもちろん俺が来ても何事かも発しはせず、ただ、置き方の問題で、俺のロッカーの前に堂々と侵入していたカバンを足で無造作に引き寄せた。
目と手はスマホに集中していてそれどころじゃないという様子である。
妙に悶々としたまま着替えを進めるうち、またしてもあの女の顔が脳裏にちらつくようになった。
そんなんだから中学で全国逃すんだよ
……うっせえよ。
てめぇなんかになにがわかる。
俺には俺の意地もポリシーもあるんだ。全国に行けなかった原因の全部が俺の落ち度にあるなんて言われたって、そんなん知るかよ。
男には、これだけは譲れねぇもんってのがひとつは必ずあるもんなんだ。
それから数日後。
その日は朝からなんとなく調子が出なかった。
それとわかっていて無理を押し、部活に参加して足首に違和感を覚えた。
と思うと、まるでそれが引き金だったかのように全身が虚脱して、気合で腕を上げようとすると今度はいきなり息が苦しくなった。
力づくで引っ込められると、体が鉛のように重かった。
「おまえ、ちょっと休め」
失望の色を濃く滲ませた監督の一言を受け、匡は光が消えたように暗澹たる面持ちで体育館を後にした。