まだあなたが好きみたい
3:切っても切れぬもの
電車に揺られている。
夜。日が短くなってからの七時過ぎの電車は、ふつうの線路を走っていても、まるでトンネルの中のように闇が周囲を覆って、車内の照明が際立って明るく感じられる。
いつもならこんなに遅い時間の電車には乗らない。
今日のように委員会の定例会など、特別な何かがあったときだけ利用する程度。
だから菜々子はこんなとき、いつも借りてきた猫のようになる。
浅く腰掛けた姿勢は不動のまま、気が遠くなりそうになりながらもどうにかやり過ごしている。
周りにいるひとたちが、いつものそれとぜんぜん違う。
だからだろうか、喧騒の質も、雰囲気も、高校生以上を中心とした若い人が多いせいか密度は一緒でもなんとはなしに窮屈で緊張してしまう。
今日も今日とて菜々子は身の置き所のない気分で残りの駅を数えている。
と、車両を隔てるドアが開いた。
奥から二人、制服姿の男の子がこちらの車両へ向かってあるいてくる。
黒縁メガネをかけた男の人に隠れて後ろの人の姿がはっきりしない。
席を探すように視線をめぐらせ、早々にそれが叶わないとわかると眼鏡は肩越しに後ろの相手の振り返った。
その瞬間。
あっと思った。
東だ。