まだあなたが好きみたい


仲間に腕を引かれてハッとして、彼は慌てた様子で監督の方へと向き直った。


けれど、心を残すわたしの方へ何度となく視線を向けるその落ち着きのなさを見る限り、彼の耳に監督の指示はその三分の一も響いていない。


と、案の定、叱責する声が聞こえた。


見本のように気もそぞろな彼へと向けられたものだ。



殊勝に顔を下に向けて反省の意を示しつつ傾聴の姿勢を取る彼の悔しそうな横顔が可笑しい。





「あれ、どこ行くの?」





わたしが立ち上がると、気配を察した有正が眠そうにまぶたを上げた。





「トイレ。荷物見てて」



「ういー」




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