まだあなたが好きみたい
自信満々だ。
ていうことは・・・・・・と菜々子はやおら目を細くし、じっと窪川を見る。
「ほーう。それじゃあよっぽどわたしのこと観察してたのね、あなたも?」
痛いところを衝かれ、窪川は一瞬言葉に詰まるも、すぐさま立て直し、
「みっ見えたんだよ。ちょうど、その、対角線っぽいところにいたからな。だからわかったんだ。それに、その動揺を裏付ける何よりの証拠がこの――」
ともったいぶって、窪川は菜々子の携帯を出した。そういえば返してもらっていなかった。
「あんな落とし方は普通じゃねぇ。何かを感じ取ってやばいって思ったんだ。携帯が東のほうに行ったとき、ぶっちゃけ肝が縮んだだろ。あんときのおまえの顔っつったら、ほんと、傑作だったぜ」
・・・・・・それを言われると正直困る。あのときは確かに、顔にまで気を配っている余裕がなかった。
菜々子は、羞恥と屈辱とを気合で飲み込んで、わかった、とつとめて平らかな声を絞った。
「なら、百歩譲って電車では助けてもらったってことにしましょう。でも、それからどうしてここまであなたが一緒にくっついてきたわけ? あなたの家は西口からで、こっちとは真逆の方角でしょ」