まだあなたが好きみたい



こいつ……こんなときに限って察しが悪い。



菜々子は焦れて、さらに強く言い募った。




「行きたいでしょ? 行きたいわよね?」



「え、う、うん……?」




最終的には半ば気圧されたように、有正はおろおろとつま先をトイレへと向けた。




「外で待ってる」




菜々子は彼の一団との距離を確かめながら一足先に外へ出た。



遅れて、目当ての男たちがわらわらと出入り口を通過する。



最後尾の彼を見つけて、菜々子は唇を噛んだ。




認めずにはいられない状況がそこにはあった。




彼の手を握り、笑っているさっきの子。



彼女、確定。



けれど一方の彼はと言えば。



口は動いていてもぜんぜん楽しそうじゃない彼の横顔は絶えずなにかを警戒しているようだった。



それが気に入らなかったのか、むくれた彼女の顔がさらに近づく。




思わず叫びそうになった。




その、距離。




恋人という言葉を、その言葉が意味する関係を、足元がぐらつくほど強く認識した。




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