まだあなたが好きみたい
今だって、こんなに動揺しているのにすこしの進展もないのは自分のせいだ。
なら、いっそ――。
動けないなら、いや、動こうとしないなら、虚心なく語らえる相手との未来にしるべを得て、着実にその道をたどったほうがずっと建設的にちがいない。
だが、現実はそんな、頭ではわかっているけれどというつまらないことをもう何度となく繰り返している。
そしてそのたびに挫折して、自分の愚かしさに目を背けてきた。
それがここにきてついに一転した。
公園の入り口を示すコの字型のポールを回り込もうと足を動かしたとき、ふと、もう吹っ切ろうという意識が現実的な重みと厚みを持って胸に迫った。
足の裏にたしかな地面の感触をおぼえて、薄暗い中でも視界がより鮮明に映った。
菜々子は公園を出た。
ここからなら、家は右に曲がってそれから、と道順をかんがえていると――
「待てよッ」
掠れ交じりの声がした。