まだあなたが好きみたい



菜々子は間合いを気にしながら思案した。




「面倒くさい人」




「は、はあ?」




窪川の口が歪み、気が抜けたんだか怒ったんだか、どっちつかずな声がこぼれた。




「ちゃんと素直に答えましたけど」


「素直」


「そう。だって、そうでしょ。いちいちひとに難癖つけるし血の気は多いし、そのうえ被害妄想大好きだし。超的確に集約してると思うけど。……不服なの?」


「おおいに!」


「だったらどう思ってほしいのか言ってよ」




すると彼は黙り込んで、




「わかんねぇよ」




とぼそぼそ言った。

だがそのくせ、




「徹底的に嫌われたいの?」



「ちがう」



「じゃあ」





言いさして、かすかに喉がふるえた。





「――好かれたいの?」





それに対し、彼は、





「まさか!」





簡潔だった。



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