まだあなたが好きみたい
意味深なホッカイロ。自身は助けたと言い張る電車での振る舞い。
「そういうの、女子はけっこう深く考えるでしょ。どうしてそんなことしてくれたんだろうって。で、どうしてって思ったら、今度はまたそこからイロイロ考えるでしょ」
言いながら、自分でもすごい聞こえよがしだなとおもった。
彼の気を引こうというあざとさ、みたいな。
だが菜々子の中にそういう思惑めいた発想はただのひとつもなかった。
自身でも驚くほど率直で、素朴な、日ごろ友だち相手にもなかなか言うことのない剥き身のゆで卵みたいな本音。
なぜこうなったのかはわからない。
でも、どうしてか言ってしまった。
それも、口をついてというほど衝動的なものでもなかったことが余計自分に衝撃だった。
伝えたかったのだ。
「吉田、おまえ……」
いよいよ一歩踏み出した窪川に、菜々子はびくっと身をこわばらせた。