まだあなたが好きみたい
「こ、これって、仕切り直しのつもりなの?」
「……え?」
自分でも恥ずかしくなるくらい、頼りない声がこぼれた。
窪川にたいし、どうしても懐疑心の払拭できない菜々子は、今さら泣きそうになりながら問いかけた。
もしここまで言わせておいて、やっぱり彼の腹の中に一物あったとしたら。
「なんのことだよ」
掴もうとして伸ばされた窪川の手を菜々子はすんでのところで避けた。
きっと男を睨みつける。
「この前はさんざんわたしを貶めようとした。でも失敗したじゃない。だからって今度はなに? わたしを惑わそうとしてるの? それってすごくいじわるなんだけど。でもご愁傷様、相手が悪いわ。そうは問屋が卸さないってことを――」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
無造作に上腕を掴まれ、乱暴に引き寄せられたかと思うと、彼の唇が自身のそれに重なっていた。