まだあなたが好きみたい
あんな思わせぶり、あるか普通。
夏の大会で俺が勘違いした視線は、たしかに勘違いだったんだろう。
中学の時の後ろめたさが俺を縛りつけて、思考が凝り固まってた。
……でも、さっきのはそうじゃなかったはずだ。
気にさせるようなことするから面倒だって言うのは、気にしたくなくてもしちゃうからやめてくれって、そういうことだろ。
つまるところ、俺のことが好きになりかけてるって、そういうことじゃんか。
いたずらに気持ちを振り子にされて、反発して、それが嫌だからやめろって。
それなのに――。
ほのめかすよりもっと透け透けの裏返しに理性が吹っ飛び、気づいたときにはああなって、ちゃんと自分を取り戻したときにはもう平手を受けた後だった。
納得がいかないのも無理はなかった。
てか、あんなん言われて、たとえそれがその気のないやつ相手だって、突っ走らないなんて嘘だろ。男じゃねーじゃん。
そういう心意気を重んじてきた俺にとって、この仕打ちは受け入れがたき屈辱だった。
(なんでこうなったかな)
あいつは理由を質してきたけど、だったら逆に俺が聞きてぇよって話だろ。なんでそんなこと言うんだよって。ましてやぶつんだよって。
そうされたかったんじゃねぇのかよって。
「……」
匡は頭を抱えて低く唸った。