まだあなたが好きみたい
(ちがう)
地団太を踏む。その振動が頬にまで来たけど気合いで無視した。
ちがう、ちがう。ぜんっぜんちがう。
……まあ、たしかに?
女が恋慕を匂わせてきたら状況によってはそういうこともありうるだろう。
だが、だからといってそこに思わせぶりだとか、ほんとうにそういうことなのかという不安がちらつくというのはすこし、いや、多分に意味合いが変わってくると思う。
だいたい、冷静になって考えてみれば、あいつが今更俺に好意を寄せることなんてあるのか。
「……」
はじめて女にキスをして、怖いと思ってる自分がいた。
……逆上せていたのは、俺ひとりだったのかもしれない。
ぶたれても、いらだっても、俺をたらしめる誇りと自信はちゃんと真ん中に残っていた。しかし頭が冴えた途端、際限なく吹き込む隙間風がそれらを根こそぎ萎えさせた。
なんで、あんなことをしたのか……。良くも悪くもそうおもう。