まだあなたが好きみたい
刹那、まるで長距離走をした後みたいに猛烈に顔が熱くなった。
たまらずぎゅっとまぶたを閉じる。
複雑に歪んだ赤面を覆い隠すよう、匡は勢いよくマフラーを引き上げた。
矛盾しているのは、分かってる。
そもそも悪い心証は今回のことでいよいよ取り返しようもないところまで落ち込んだかもしれない。
それを思えばいやがおうでも不安は募った。
だが、その思いとはまったく別に、キスそのものについて並々ならぬ喜悦を感じたことは隠しようもない事実だった。
それこそ、すこし、切なく思えるくらいに。
(俺も、だいぶ焼きが回ったな)
苦笑した。
ほんと、どうかしてる。
いつもはただ長いばかりのうんざりするような帰り道が、今日に限っては不思議とあっという間の道程だった。