まだあなたが好きみたい
いきなり有正の語調が変わった。
シラ、リン?
うちの学校にそんな親しい知り合いがいたのか、……おまえが?
匡の肩越しに手を振る有正の視線を追い、いぶかしみながら首を振り向ける。
その視線の先にいた人物に、匡は声に出るほどぎょっとした。
(シラリンって、まさか!)
片やはつらつと笑顔を向ける有正に、慣れた様子で軽く手を上げ応えるそいつ――
それは、見紛うことなき白井、その人だった。隣には夏原もいた。
「あいかわらずクールなシラリンめーっけ。どこかの誰かさんとはちがうねー」
わかりやすすぎる当てこすりに匡はぎっと有正をにらみつけた。
上気した頬ながら、有正の言うとおり、その表情は平素と変わらず生意気なほど落ち着いている。
だから特にそう見えるのか、射るような眼差しで俺を一瞥して、白井は淡々と有正に問いを向けた。
「有正、どうしたこんなところで。迷子か?」
「ちがうよ。ちゃんと理由があって来たんだよ。そしたらなんか、ヤンキー風の変な人に絡まれちゃってさあ。同じ部員でしょ? なんとか言ってよ」
言われて白井はまた俺を見た。
しかし、有正の懇願もむなしく、白井は何も言わずに視線を戻した。
白井はいつもそうだ。周りのやつとは普通に口を利いている様子なのに、俺のことは頑なに相手にしない。
もう慣れたと言えば嘘になるけれど、だからといってこちらからおもねってなにか会話なり交流なりを得ようとは思わなかった。
「知り合い?」
穏やかとはいえない状況に、間を持たそうとしてか、夏原が白井にさりげなく水を向けた。