まだあなたが好きみたい
「中学のとき、塾が一緒だったんだ」
塾? なんだこいつ、ちゃんと勉強してたのか。
そういや白井って部活推薦じゃなかったんだっけ。
学校での成績はいまひとつで終わってしまったけれど、個人的に評価の高かった匡は県内外から進学の話があった。
だからといってまったく授業を聞いていなかったわけではない。浮かれて図に乗り、そっくり定期考査を疎かにしたらいくらスカウトありきの推薦でも落とされるかもしれないと当時の担任に言われたからだ。
だから一応やってはいたけれど、塾なんて考えは毛頭なかったし、最後まで身を入れてこなしたかと聞かれれば自信はない。
白井が俺のことを徹底して無視するのは、自身も実力がありながら周囲と同じ方法でしか進めない悔しさに加え、
それらゆえに受け取りがちな匡の確証のない慢心に対する不満、あとは単純に特別扱いが気に入らないせいなんだろう。
嫉妬の一言では片付けられない根深さを感じるのはたぶん、そういうことだ。
「もう帰れよ。他校生がひとりでいるといやでも目立つぞ」
「わかってるよ。でもこいつがさー……あ、そうだシラリン。こいつね、今ちょーダメダメでなにしでかすかわかんない感じだから、気が向いたら揉んでやってよ」
「やかまし、痛ッ!!」
いきなり有正の人差し指が匡の頬を突き刺した。しかもシップの貼ってある敏感な左側。匡は苦悶の表情でうつむいた。
夏原はぎょっとして、お、おい、と間に入ろうとしたが、白井にそんな雰囲気はこれっぽっちもない。
と思いしな、その白井と目が合った。