まだあなたが好きみたい
愛するが故の爆発
「おまえさ――」
練習上がり。先輩たちはとうに帰路に着き、一年生の中でもとりわけ帰宅にルーズな面々ばかりが顔を合わせる時間。
2軍で慣らしつつ掃除もして遅くなった匡は、いまだ体育館で無駄話に夢中の同輩を残して、ひとり、閑散とした更衣室に足を踏み入れた。
後ろ手にドアを閉めようとして力でそれを封じられ、誰だと思って振り返るとそこには険しさと難しさがない交ぜになった白井の顔が。
白井自ら声をかけてきたのは、このときがはじめてだった。
呆気にとられて立ち尽くす匡を横柄に押しのけ、白井は中へと入ってきた。
「有正になめられるなんて、よっぽど間抜けなことしたんだな」
それ、とほかの連中が慎重に遠ざけている対象を、こいつもまた平然と指摘した。
しかし俺はこれを、からかっているんじゃない、と直感した。
まともに取り合うな。そう自分に声をかける。
「有正はいつだってああだろ」
「いやちがう」
即答だった。
「揚げ足取るとこはあっても、あんなおおっぴらに貶したりしない。あれは少し怒ってた」
「わかんのかよ」
「俺は口下手でいつもこんなだから、だいたい生意気でとっつきにくいって言われるけど、おまえよりかは人を見てるぜ」
「……はあ?」
次の瞬間、着替えを終えた白井がわざと音を立ててロッカーを閉めた。