まだあなたが好きみたい
方向ずれてる? たぶん、合ってる
「―――おい」
不躾な声に呼び止められた。
おどろくことではない。
むしろ、いつ来るのだろうとすこし焦れ始めていた。
菜々子は足を止め、緩慢な動作で振り返る。
「何が目的なんだよ、おまえ! さっきから!」
「なに、藪から棒に。話が見えないけど、すごく物騒なことを言われてる感じがして気分悪いわ」
「それは俺の科白だ。何しに来た!」
菜々子は眉をひそめる。
「自分の学校の応援だけど?」
「おうえんん? ……あ、ああ、そうか。おまえ、そういえばあの学校に―――そう、だったな」
噛んで含めるように言うと剥き出しに険のあった眼差しがすこしだけやわらいだ。
しかしそれでもまだひしひしと伝わる感情は攻撃的で、菜々子の言葉を完全には信じ切ってないのかひどく懐疑的なままである。
おそらくそうなのだろう。
そんな初歩的なことも失念するくらいだ。
もっとも。
(そうじゃなきゃ困るけど)
菜々子は頷いて、白々しくならないようとぼけながら小首を傾げた。