まだあなたが好きみたい
それぞれの変化
翌日。
「ねえ、窪川。ちょっと聞きたいことあるんだけど、いいかな」
休憩時間。
軽く腹に入れておこうと、弁当とは別に用意してきたおにぎりをかじろうとして、さえぎられた。
元カノととりわけ仲のいい女子である。元カノと別れてからも変わらず俺に話しかけにくる酔狂な女だ。
(と、思っているのはどうやら俺だけみたいだけど)
どうやらこいつは俺たちがとても友好的で円満な別れ方をしたと思っているみたいなのだ。
それというのはたぶんあいつが、俺と別れた本当の理由や、そこに至るまでに起こった逐一を、一番仲のいいこいつにすら報告しなかったということなのだろう。
明らかに俺の落ち度で別れたというのに、こいつの態度に自分の友人を裏切ったことに対する攻撃的な振る舞いはまるでない。
別れ際の言葉といい、あいつがそんなに大人だとは知らなかった。
付き合っていた頃はわりと勝手で、多忙な俺ができる範囲を理解しつつも連絡を怠るとすぐにむくれた。
かわいいものを強要されたいやな思い出もある。
でも、キスのねだり方が絶妙で、俺の喜ばせ方を知っていた。
それが生意気で、かわいくなくて、好きだった。
だからもっと、子供だと、思っていたんだ。