まだあなたが好きみたい
不本意だが。
そう言うと、彼女はいきなり爛々と目を輝かせて俺に迫り、
「わたし、有正くんと付き合いたいの。知ってたら教えて、メアド」
「つきあ、ハッ!? ――げっほ、げっほ、げっほ」
あまりの衝撃に米が気管に入った。どんどんと胸を叩く。
「ちょっ、だいじょうぶ、窪川」
「……お、おまえの方こそ正気かよ」
「え? なんか言った?」
匡の心の声はどうやら拾われずに済んだらしい。涙目になりながら、匡は、いや、と首を振った。
「悪いけど、俺はあいつの連絡先はなにも知らねぇ」
「なんだ、そっかあ。ザンネン」
落ち込む彼女の横顔に、匡はいささかもどかしい気持ちになった。
こいつ、本気なのかよ。
匡は怯んだ。
そのとき彼女がぱっと椅子から立ち上がった。行ってしまいそうな気配にたちまち胸が騒ぎ出す。
「食べてるとこ邪魔してごめんね。他、あたってみるか――」
「よかったら俺、あいつに聞いてやらないこともないけど」